植生調査のために調査員が行き来してできた、山の頂上へ向う一本の道。
草を踏み固めてできた、道とも言えないような、けもの道。
たったそれだけのことが、その地域の植生を変えてしまう。
そのことを知った時の驚き。
私が十代の頃、夢中になったのは山登りでした。
コリン・フレッチャーの『遊歩大全』や芹沢一洋の『バックパッキング入門』を
何度も読んで山に向かいました。
上の文章はそのころ読んだ本に出てきたひとつのエピソードなのですが、
いまだにそのシーンは、私の心に深く刻み込まれています。
ですから「好きな建物は?」と問われると、
バックミンスター・フラーのジオデシックドームはとてもかく、
テントだったりするのですが、そんな私がなぜか今、住宅を造っています。
私はいわゆる、エコな人間ではありません。
「自然保護」という表現も、おかしいと思っています。
人間も、自然の一部には違いないのですから、
それを言うなら「環境保護」ではないかと。
しかしながら地球環境に対して、人間という種族が一番の負荷をかけている、
というのは事実だと思っています。
そして、人はむき出しでは生きていけません。
必ず「家」というシェルターを必要としています。
ならば、できるだけ環境への負荷が低くて、
なおかつ人が快適に暮らせる家があればいいのに。
そんな昔から考えていたことを、少しずつ現実にしてきています。

